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あぐらをかいた自分の上で、泉が足を開いた状態でまたがっている。 一糸纏わぬ姿は、後孔に入れた指を動かすとひくりと震えた。 「っんん……」 もどかしそうに腰を揺らめかせては、泉は口付けを求めてくる。 後ろを掻き混ぜられる異物感をキスで誤魔化そうとしているようだ。 入れるべきところではないのだから、気持ちが悪いだろうと思う。 だがそれだけではないだろうということは、泉のものを見れば分かる。 嫌なだけならば、それが堅くなり始めているのはおかしい。 「っんん！んん！」 潤滑油の助けを得て、奥まで入り込んだ指は中のしこりを撫でる。 男でも中で感じることが出来るのは知っている。しかし泉に試していると、それほどかと思うほど顕著に反応するのだ。 声が跳ね上がったかと思うと、茎までびくりと応じてくれるのだからたまらない。 ついそこばかりいじってしまうのだが、それが不満なのか感じすぎるのか、泉は恭一の舌を吸い上げては歯を立てた。 「ぃ…」 きつく噛まれるとさすがに痛い。 思わずキスを止めると、泉が首を振った。 それはキスを続けろと言うことなのか。それともそこばかり触るなということか。 （両方かも知れない） そんなことを思いながらも、恭一は中を軽く爪でひっかいた。 「やあぁぁ！」 弾かれるように声を上げて、泉は後ろを締め付ける。 肩に置かれていた手が爪を立てて、恭一の皮膚を引っ掻くのだがそんな痛みは何とも思わない。 耳に流し込まれた声があまりにも魅力的で自分の感覚など淡いものだ。 太股が小さく痙攣しているが、まだ達してはいない。それでも茎は十分熟れている。 指で弄ってやればとろとろと濡れることだろう。だがそれをせずに、恭一は中に埋めた指を緩く動かした。 しこりの周囲をほぐすように、優しく撫でる。 しかし一度きつく快楽を与えられた後では、それはもどかしい刺激なのだ。 これまでの経験で泉がそう感じることは学習済みだった。 案の定泉は高揚した頬を隠すことなく、潤んだ瞳で恭一を見てくる。 上から見下ろしされている。それなのにねだられているこの眼差しはかなり蠱惑的だ。 （エロいな。可愛い） 泉は悦楽に素直だから、与えてやればちゃんと食い付いてくる。 従順でたまらない。 だからこそもっと啼かせたいと思うのは、男として当然の欲求だろう。 喉で笑いながら恭一は泉の耳に噛みついた。 今日は小ぶりのピアスばかりだったので、容易に口に含む事が出来た。 歯を立てると金属の音が口内で聞こえる。 無論泉もそうだろう。 「恭一、くん……それやらしい」 「知ってます」 わざと水音を立てながらピアスを噛んで遊んでいると、後孔がひくりと収縮する。 この音で感じられるらしい。 「耳噛んでないんですけど。こんなのがイイんですか？」 「だって、なんか」 なんか…と言うけれど泉は目尻を染めるだけでろくに表現出来ないらしい。 身じろぎをする泉を指で犯すように、指を出し入れする。 律動は確実に雄を彷彿とさせるものだろう。そして気紛れのようにしこりにも触れた。 「ぁ、あぅ、んんっ……」 だがしこりに触れるのは一瞬だけで、泉はそれが惜しいというように腰を揺らした。 「何一人だけで気持ち悦くなってるんですか」 「いっ……」 仕置きのように耳をきつく噛むと泉が萎縮する。それでも茎は萎えることがない。 「俺の指で自慰はないでしょう」 それはそれでかなり美味しいのだが、そんなことはおくびにも出さずに恭一は叱るように言った。 すると泉は戸惑いながら唇を開く。 「い…れて」 羞恥と欲情が混ざって、何とも言えない扇情的な表情を浮かべている。 泉のその顔を見たいが為に、入れて欲しいという言葉を欲している自分は倒錯的なのだろうか。 （下半身にダイレクトに来る顔だな。いつも見ても） これだけで勃つ自信があるほどだ。 泉が知れば「そんな自信はいらない！」と怒鳴られそうだが。 「じゃもうちょっとこっち来て下さい」 泉の腰を持ちながら、もっと身体を密着させる。 ついでとばかりに泉の茎を掌で包むと「ひあ！」と可愛らしい声が聞こえた。 「駄目、それ持ったら！」 「どくどくしてますね」 掌で脈打っているそれに舌なめずりをしながら告げると泉が首を振った。 「離して、ね。お願いだから」 お願いなんて上擦った声で言われて、誰が聞けるだろうか。 それを緩くしごきながら、泉の腰を自分のそれの上に持っていき、呆気なく落とした。 「っぁ、ああああ！」 いきなり全部入れるのは可哀想だと思い、半ばで止めたのだがそれでもかなりの悦になったらしい。 高く啼いては泉の身体が強張った。 しかしイって貰っては困るので、茎の根本をぎゅっと掴んでは出ないようにしておいた。 「ひ、どぃ……ばか」 泉は過ぎた快楽に太股を軽く痙攣させながら呻く。 くわえ込んでくれている内部は熱く、恭一のものを締め付けてきた。 痛みの一歩手前の、かなり窮屈なそこは押し広げると絞るようにうごめいてくれる。 「その馬鹿は反則ですね。エロい」 「エロい言うな」 はぁ、はぁと呼吸を整えようとする泉を待つことなく、恭一は腰を突き上げ始めた。 「ぃ、あ、あぁ、ん」 泉の中は恭一を飲み込んではぎゅうとはんでくれる。それまで痴態を見せつけられて興奮していただけに、その感覚は恭一を追いつめてくる。 （っとにこの人の身体は、どこもかしこもエロい！） 「手、駄目、ぇ！」 恭一はなんとなく緩く泉の茎を弄っていたのだが、弱いその力にすらきついまでの刺激を味わっているのか、泉が啼く。 「駄目じゃないです。こんなに濡らして」 ぐちゅぐちゅと水音がするほど先端から雫を溢れさせているのに何が駄目なのか。 笑いながら泉の後頭部を引き寄せては舌を差し出した。 すると泉は躊躇いもなく、自分も舌を出して絡めてくれる。 「ふ、っんん…っん」 口付けながら乱暴なまでに腰を打ち付ける。肌がぶつかる音が絶え間なく響いている。 「っん、んん、んんん！」 泉がーの手が茎を触っている手を止めようとしてくる。それを反するように根本からきつく絞り上げると後ろがきつく締まる。 「んん、んんっ、ふ、あぁ！」 泉の身体が震え、茎の先端から白濁が吐き出される。 強張る身体は恭一をきつく噛み、それに抗うようにして貫き上げると自分もまた熱を中にぶちまけた。 「ん、っ」 腰で渦巻いていた劣情を中に叩き付けると、急激に虚脱感に包まれる。 力が抜けていくのだが、同性であるはずの泉は快楽にまだ浸っているのか震える身体で微かに喘ぐ。 「あ……っぁ、ぅ……」 目を閉じてあられもない音を零すさまは無防備で、食らい付きたくなる。 きっと前で感じる感覚と後ろで感じる快楽は違うのだろう。 じっとそれを観察しているだけでも、再び泉の中を汚したくなる。 引いたはずの欲情の波が戻ってきそうだ。 力が戻ってきた手で、泉の前髪を掻き上げてやるとまぶたが上げられた。 泣いているような瞳が恭一を映してくれる。 （色が違うな……） 人の眼球と、作られた眼球。 ぱっと見ただけでは大差ない色なのだが、こうして間近で覗き込んでいると違いが感じられる。 金色だ。そして緋色だ。 どこがどう、とは言い表せない。 だが深い茶色の瞳にその色彩が込められているのだ。 まるで光のように。 （特別な人なんだ） この世で誰もこの人の代わりなど出来ない。この世の摂理に組み込まれている存在。 「恭一、君」 快楽を納めたのか、泉は吐息のように呼んでくる。 「はい」 「どうか、離れて行かないで……」 お願いだから、と言う泉の声は心臓に突き刺さる。 切実過ぎる声は、恭一が数秒前まで思っていた気持ちを粉々に砕くほどの威力があった。 細い身体が壊れてしまうような錯覚まで覚えて、そっと抱き込む。 泣き出しそうな子どものように、小さく感じる人の懇願に恭一は頷く。 「行きません。行くはずもありません」 誓うように囁く。 「俺は貴方に憧れてここまで来たんです。貴方だけを欲しがって生きて来た。貴方なしの生き方なんて知らない」 恭一の人生にはいつも朝日奈があった。 憧れであり、目標であり、求めずにいられない相手なのだ。 その朝日奈が、泉が自分の手を取ってくれたというのに、他に何処へ行けるだろう。 もう他の物など見えはしないのに。 「俺は貴方に魅入られてるんです」 初めは朝日奈の人形に魅入られ、そして泉に落ちた。 到底抜け出せそうもない。 しかしそれはとても嬉しいことであるような気がして、ふっと口元が緩んだ。 それによほど喜色が滲んでいたのか、泉も不安げな色を消しては弱く微笑んだ。 「それは良かった」 安堵した声に、恭一は懐くように口付けた。 泉がのっそりと起きた時にはすでに太陽は高らかに陽光を歌っていた。 早く言えば昼過ぎだった。 （身体の関節がぼきぼき言いそうだ） 全身が軋んでいる。 ベッドの中でもぞもぞしながら、自分の身体の感覚を確かめるのだが奇妙な部分の筋肉が酷使されているような気がする。 （今に始まったことじゃないけど。目覚めると大抵どうしようもない疲労感に包まれる……） 人形制作で徹夜したとしても、こんな気持ちにはならない。 気怠さと甘ったるさと、精神的な部分が溢れそうなほど満たされている気持ち。 心の芯があたたかくなっている。 セックスは快楽のためのものであり、メンタル部分を期待するともの悲しいことになる。それは恭一に出会う前に学んだことだったのだが。 それをあの年下の恋人は見事に覆してくれたのだ。 （僕に対して執着が強いくせに、ここのところ奇妙な距離感を置いてたけど） 昨夜の感じならばきっと離せと言っても離してはくれない程になっていることだろう。 人間のそんな独占欲は邪魔になるはずだったのだが。恭一に対してだけは安心に変わる。 （僕も大概恋愛に狂うタイプかも知れない） そこの辺りは淡々としているつもりだったのだが。 くあとあくびをして上半身を起こす。全裸でベッドに転がっているばかりでは堕落が過ぎるだろう。 服を纏って一階に下りると、リビングには恭一と緋旺がいた。 二人して新聞を読んでいる。なんというインテリな空間だろう。 「おはようございます。ご飯食べますか？」 恭一は泉を見ると笑顔でそう言ってくれる。艶々とした顔は実に元気だ。泉のような疲れはないらしい。 （若さの違いか…） 自分が年よりだとは思いたくないのだが、翌朝の恭一を前にすると痛感させられる。 「うん。食べたい。おなか空いた」 拙い言い方をしてソファにどさりを座る。すると隣りにいる緋旺が新聞から顔を上げた。 「体力を考えるべきね」 「……僕は制止をかけたよ……」 情事の後であることは空気から感じられるのか。それとも緋旺が目覚めた時に察知してしまったのか。どちらにしても少女の口から匂わせれるのは気まずい。 言い訳をぼそりと言うと緋旺は肩をすくめた。 「制止が制止に聞こえないんじゃない？」 それって僕のせいなわけ？と言いたい気持ちは、すでにキッチンに立っている人がひょいとこちらを見て「チャーハンでもいいですか？」と言ってきたので飲み込んでしまった。 |